以前に発信したLow-Eガラスの記事がお陰様でたくさんの方々にご覧頂いております。
2024年の9月にガラス交換や内窓設置を行った際に、ようやく各メーカーのLow-Eガラスの違いについて理解が深まってきましたので、情報の共有を行いたいと思います。
いつも通りに失敗もしていますので、この記事がどなたかのお役に立てばと感じております。
- Low-Eガラスの各種性能の違いを知りたい人
- Low-Eガラスの色の見え方の違いを知りたい人
今回我が家ではAGC製サンバランスというガラスで窓リフォームをし、Low-E色それぞれ
- クリア(透明ガラス・内窓&既存内窓のガラス交換)
- グリーン(型ガラス・ガラス交換)
- ブロンズ(型ガラス・内窓&ガラス交換)
- シルバー(透明&型ガラス・ガラス交換)
を各所に使い実際にどのように見えるのかを検証してみました。(全部アルゴンガス入り・樹脂スペーサー仕様)
一般の一軒家で窓リフォームの際に4種類の色のLow-Eガラスを使った家は中々ないはず。生活感と共に各色をご覧ください。
また、以前DIYでインプラスのクリア&グリーン(両方とも透明ガラス)も設置しております。こちらはLIXILの刻印がありますが、ガラス性能値はAGC製のサンバランスと同じです。
この記事をご覧頂くことで、LIXILのインプラスのLow-E色あるいはAGCのサンバランスの色の見え方がわかります。
ガラスの3大メーカーについて
国内の3大ガラスメーカーは
- AGC(旧旭硝子)
- 日本板硝子
- セントラル硝子
の3社で建築物の窓に使う板ガラス製造の大半を担っています。
AGCは売り上げダントツNo.1で世界でもシェアが高いです。
日本板硝子は皆さんご存知の真空ガラススペーシアなど独自性のある製品を作っていますね。
この3社は板硝子協会という業界団体に属し、エコガラスという共通の呼び名で消費者に高性能のガラスを認知させようとしています。
いっぽう、サッシメーカーの3大メーカーといえば
- LIXIL
- YKK AP
- 三協アルミ
です。窓はサッシメーカーの工場の中でガラスと組み合わせ完成品として出荷したり、あるいは建設会社(工務店)が自社で組み立てる場合もあります。
ガラスやサッシの商流・業界構造は複雑で、一般の我々にはとてもわかりにくいのでこちらをご覧頂くとなんとなく理解できると思います↓
経済産業省資源エネルギー庁/複層ガラスとサッシの関係業界のヒアリングにあたって
- LIXILのLow-EガラスはAGC製品を使用(よくあるお問い合わせより、検索:メーカー)
- YKK APは単板ガラスは他社製、複層ガラスは一部自社製(よくある質問より)
- 三協アルミはガラスは製造していない(よくあるお問い合わせより)
YKK APはサッシメーカーでしたが、2005年からガラスも作ることになりました。
そのあたりの窓メーカーとしてのAPWという樹脂窓の発表やリフォーム事業店舗「MADOショップ」の展開などは→YKK相談役 𠮷田 忠裕の「私の履歴書」#21窓戦略#22窓学をご覧ください。
戸建て用のLow-Eブルー色のほとんどはYKK APのガラスに多く使われており、Low-Eニュートラル色はYKK AP以外では見当たりません(他メーカーのクリア色)。
また、建築用のガラスには住宅用ガラスとビル用ガラスという2種類があります。
ビル用ガラスにはマンションのガラスが含まれており、戸建て用のガラスよりも厚みがあり、建物の雰囲気に合わせた色の種類も豊富にあります。
戸建て用の色の種類も豊富にあると思っていた勘違いが今回のガラス選択の失敗にもつながりましたので、最後までご覧ください。
なお、今回紹介したLow-Eガラスは全てペア(複層)ガラスとなります。トリプルガラスの日射熱取得率などの性能値とは異なりますのでご注意ください。
ご自宅の既存ガラスの厚さはこちら↓↓を使ってわかります。
※ガラスシクネスゲージの使い方はコチラの記事をご覧ください。
日射取得型と日射遮蔽型の違い
Low-Eガラスには金属膜の位置の違いにより断熱タイプ・遮熱タイプというものがありますが、それ以前に日射取得型か日射遮蔽型のどちらかになります。
拍子抜けしてしまいますが、
- 日射取得型はガラス中央部の日射熱取得率が0.50(50%)以上のもの
- 日射遮蔽型はガラス中央部の日射熱取得率が0.49(49%)以下のもの
この数値の違いだけです。
したがって、
- 日射取得型の遮熱タイプ
- 日射遮蔽型の断熱タイプ
のガラスも存在するということです。これを理解すると間違いは起こりません。
日射熱取得率が良いものは単板ガラス0.88複層ガラス0.79となりますが、断熱性を上げるためにはLow-E膜が必須となり、結果的に日射熱取得率は下がります。
内窓(二重窓)をつけた場合や、トリプルガラスを選んだ場合は必然的に日射熱取得率が下がることは覚えておく必要があります。
Low-Eペアガラスでは次のような分類となります。
日射取得型 | 日射遮蔽型 |
クリア | グリーン(断熱・遮熱タイプ共に) |
ニュートラル | ブロンズ(断熱・遮熱タイプ共に) |
シルバー | ブルー(断熱・遮熱タイプ共に) |
日射取得型は基本的に断熱タイプとなります。遮熱タイプにもできるでしょうが、あまり意味はないと思います。冬の日射を取り入れることが可能な南窓に適しています。
熱収支は熱貫流率(熱損失)が少なく日射取得が高いほうが良くなっています。
しかし、ガラスの性格上から熱貫流率が少なくなるほど日射取得率が低くなります。
また、寒さや日射量は地域によって違い、地域別に適切なバランスが必要です。
日射取得型は日射遮蔽型よりも冬の太陽を味方にできます。
日射遮蔽型は北・西・東の窓に適しています。南面が他の住宅等の影響により冬の日射の取り入れができない場合は、全ての窓が熱貫流率の低い日射遮蔽型で良いでしょう。この際遮熱タイプを選択します。
おかしな日本語ですが遮熱タイプの断熱性は断熱タイプと同様です(断熱タイプより若干断熱性が良いという話もあります)。外側に金属膜が貼られているので、あくまで日射の入りを抑えるという特性があるのが遮熱タイプになります。
断熱窓と遮熱窓の考え方については、
兵庫・姫路の工務店モリシタ・アット・ホーム様の動画がわかりやすいです↓↓
地域別の日射量の違いや具体的な冷暖房費などについてはこちらの本で具体的に知ることができます↓↓
一般の人がガラスの仕様を知る方法
提案されたガラスがどのようなものかわからない、そんな場合でもご自身で調べることは可能です。
- 熱貫流率(U値)を聞く
- 日射熱取得率(η値←イータち)を聞く
↑たったこれだけです。
先進的窓リノベ事業など住宅省エネ2024キャンペーンでも(私たちには関係ありませんが)ガラスの登録や申請の際に製品情報が必要ですので、わからない場合は教えてもらいましょう。
あとは熱貫流値(U値)と日射熱取得率(η値)から方角にあった窓なのかを調べられるところは調べてプロに確認しましょう。
それぞれ確認ができます。
Low-Eクリア(Low-Eニュートラル)
外からの見え方
Low-Eクリアは日射取得型で日射熱の取得に優れているため、冬期の日差しの恩恵を受けられる箇所に使うことで効果を期待できます。
日中日差しが入る南のリビングなどに使うのが家が暖まり最適です。(冬のお日様は角度が低いので夏よりも多くの日差しが入ります)
逆にいうと、冬期の日差しが隣家などの影響で入らない場合は日射遮蔽型の他のタイプで良いということです。
YKK APではLow-Eニュートラルがあり、AGCサンバランスのクリアより日射熱取得率が少し高いようです。
- AGCクリア(インプラス)→0.58
- YKK APニュートラル(プラマードU)→0.62
熱貫流率は空気1.7 アルゴンガス1.3でクリアとニュートラルの断熱性能は同じです。
外からの見た目は普通のペアガラスと大差はなく、外からの視線が気になる場合は型ガラスにするか後述するLow-Eシルバーにするのも一手でしょう。
室内からの見え方
夜の外からの見え方
レースのカーテン程度では丸見えなのがよくわかります。普通のペアガラスと一緒ですね。
インプラスの見え方
Low-Eグリーン
Low-Eグリーンは日射遮蔽型のガラスです。冬の日射が期待できる窓以外はこのタイプの窓を選べば間違いありません。
熱貫流率は空気1.6 、アルゴンガス1.3。
Low-Eブルーも熱的性能はほぼ近い数値なのでメーカーの違いで色が違うと考えてください。
- 断熱タイプ
- 遮熱タイプ(LIXILは高遮熱タイプ)
の2種類がありますが、遮熱タイプ(外側で日射をカット)を選んでおけば良いです。
日射熱取得率は断熱0.46遮熱0.39と0.06程度。
YKK APのLow-Eブルーも断熱0.45遮熱0.40と0.05程度の差です。
数値を見ると断熱タイプでも日射遮蔽型(0.49以下)になっていることがわかりますね。
断熱タイプか遮熱タイプかの違いよりも日射取得型か日射遮蔽型かによって基本特性が大きく変わります。
外からの見え方
室内からの見え方
夜の見え方
夜になると外からは何色か判断できません。左半分の室内側はレースのカーテンです。
型ガラスにしてレースのカーテンをつけると電気を点けていてもプライバシーが保たれます。
外窓も閉めて撮りましたが、透明ガラスはレースのカーテン程度では丸見えなのがわかります。
インプラスの見え方
反射してわかりづらいですが外から外窓を開けて内窓インプラスを撮影。
内窓にLow-Eガラスを入れても正直外からは何色かよくわかりません。
絶対に内窓は色ではなく性能値で選ぶべきでしょう。
Low-Eブロンズ
このLow-Eブロンズの色が個人的に一番気になっていました。
Low-Eブロンズは日射遮蔽型のガラスです。断熱タイプでカタログには載っていますが、遮熱タイプでも可能でした。そのあたりはガラス屋さんや工務店さんなどに問い合わせしてみてください。
インプラスのカタログには「北海道・東北エリア限定発売品種となります」と記載されているので、そちらもご確認ください。
ブロンズは日中は反射して外から室内が見えにくいですが、夜間は電気を点けると他の色に比べると見えやすい気がします。
また、夜は照明で室内側がかなり赤茶っぽくギラつきますので非常に好みが分かれると思います。特にカーテンをしない窓に付ける場合は要注意。
私の妻にもしブロンズが滞在時間の長い台所の窓ガラスだったらかなり嫌だったかもと言われましたので、画像をよくご覧ください。
外からの見え方
室内からの見え方
ブロンズにするとなぜか日中の光は明るい薄いブルーが中に入ってきます。
この特徴のある光は慣れるまで違和感がありました。
夜の外からの見え方
夜の室内からの見え方
ブロンズ色の内窓は悲しいかな夜に室内の電気を点けて初めて「あっ、ブロンズだったんだね」とわかる程度です。
ブロンズは外窓交換かガラス交換で夜はカーテンを閉める箇所が最適
Low-Eシルバー
Low-Eシルバーは日射取得型のガラスになります。つまりLow-Eクリアやニュートラルと同じタイプです。日射熱取得率は0.63とクリアやニュートラルを上回ります。
シルバーという名前ですが外からは薄いブルーに見え、夜は電気を点けると室内側からは完全にブルーに見えます。
熱貫流率は空気1.8アルゴンガス1.5とやや他色に劣りますが、ガス入りならばそれほど気にならないでしょう。
私はガラス屋さんにブルー色があるかと尋ねたところあるとのことだったので、性能値を聞かずに勝手にYKK APのLow-Eブルーの性能と同様のガラスだと思い込みました。北東の窓に使いたかったのでじゃあそれの遮熱タイプにしてと……。
結果的に日射取得型の断熱タイプで0.63のLow-E膜が室外側ガラスに付いたので遮熱タイプ0.57になったのですが、数値的には0.50以上なので同じ日射取得型のままです。
台所に使って色は妻が気に入ってくれたのである意味結果オーライでしたが、最初にガラスの性能値を聞いておくべきでした。
Low-Eシルバーは日射取得型でクリアよりも外から見えにくいことから、
- 冬の日射を積極的に取り入れたい
- クリアの透明ガラスは好みではないが型ガラスにはしたくない
我が家の南西のリビングの大きな窓に最適だったのでは?とあとから思いました。
また失敗したので皆さんは気をつけてくださいね(笑)
外からの見え方
室内からの見え方
夜の外からの見え方
夜の室内からの見え方
生活感のある室内が映り込んでしまっていますが、電気の反射でブルーにしか感じられません。少しギラギラ感ありますが、ブロンズに比べると落ち着いた印象です。(個人的な感想)
まとめ
というわけでAGCの住宅用Low-Eガラス「サンバランス」を全色入れてみました。
少しでも参考になれば幸いです。
内窓のLow-Eガラスの選び方としては
- 冬の日射が入る南窓→クリア
- その他の窓→グリーン(高遮熱仕様)
- 冬の日射が入る南窓→ニュートラル
- その他の窓→ブルー(遮熱タイプ)
で良いでしょう。
(参考までに我が家の日射取得できる方角は南ではなく南西で、そちらの内窓は日射取得タイプを設置しました)
その他1箇所ずつ希望があれば色の変更や型ガラス等をご検討ください。
あわせてこちらのLow-Eガラスの記事もご覧いただければ幸いです↓↓
窓リフォームに約半額の補助金がもらえる先進的窓リノベ事業の記事はこちら↓↓
最後までご覧いただき、ありがとうございます