- ガラス交換だけで窓の断熱性を向上させたい
- 最適な窓リフォーム内容が知りたい
- 内窓設置や外窓交換と比較したガラス交換の利点・欠点が知りたい
こんな疑問に自宅にDIYで内窓を付け、最近開口部について学んでいる私が解説します。
窓業界を敵に回しそうですが、後悔してほしくないので言っちゃいます
- ガラス交換はいくら性能の良いガラスを入れても、フレームがアルミだと効果が半減
- 真空ガラスは現在樹脂窓やアルミ樹脂複合窓を使っているかたにこそおすすめ
- アルミ窓の住宅には内窓設置をするか、外窓交換をして窓断熱をしほうが良い
具体的な数値や実例をもとに解説しますので最後までご覧ください。
今使用しているフレーム・ガラスの確認
窓のリフォームをするにあたり、フレーム(窓枠)の現状の確認をして対策を考えます。
断熱性能は以下のイメージで考えていただくとわかりやすいです。
フレームの種類の確認方法
フレームの種類の確認は室温と異なる物質をしばらくフレームに密着させた後に離して温度変化を肌感で調べる方法が手っ取り早いです。
- 寒い時期→ホッカイロをあてる
- 暖かい時期→アイスノン等の保冷剤、氷をあてる
温度変化が感じない場合は樹脂、付けた物質に近い温度感になればアルミとなります。
>>こちらの記事でもフレームの確認方法について詳しく解説しています↓↓
ガラスの種類の見分け方(単板ガラスかペアガラスか)
現在付いているガラスの種類の確認の方法になります。
ガラスを指先で挟むと大体の厚さが把握できます。
- 数㎜程度→単板(1枚)ガラスです。
- 1cm以上ありそう→複層(ペア)ガラスです。※合わせガラスや防音用の特殊なガラスを除く
※こちらの道具を使うと、正確な厚さがわかります↓↓
ペアガラスがLow-Eガラスかどうかの見分け方
ペアガラスの場合は、Low-Eという薄い金属膜がガラスの間に入っているものがあります。見分け方はガラスの右下の刻印で判別が可能。
Low-Eガラスは断熱性能が良いので、寒さを感じるのであれば内窓設置での対策となります。
Low-Eなしのペアガラスは断熱性能が悪いので、ガラスの交換や内窓設置により断熱性能を上げる必要があります。
>>Low-Eガラスの選び方はこちらの記事で詳しく解説しました↓↓
交換するガラスの選択
- アルミ樹脂複合窓や樹脂窓の場合→Low-Eガラスや真空ガラスに交換
- アルミ窓の場合→真空ガラスに交換、あるいはアタッチメントを使いペアガラスに交換
アタッチメントを使う場合、今までよりガラス全体の厚さが増します。網戸に干渉する場合もあり注意が必要に。
またペアガラスの効果の源の中間空気層が6㎜程度のものしか選択できません。12㎜程度の空気層をもつ通常のペアガラスに比較すると断熱性能は下がります。
真空ガラスの説明
ここからは今話題の真空ガラスについて説明します。
真空ガラスは1997年に日本板硝子株式会社が世界初の商品化に成功しました。「真空ガラス スペーシア」として特徴の違う数種類の製品が販売されています。
- 2018年には国際規格のISOを開発
- 2022年には日本産業規格のJISを制定
「デコ活」で注目が集まる中、カーボンニュートラルの実現に寄与するガラスとなります。
公共施設にも多く使われているので耐久性は心配ないでしょう
真空ガラスの構造と特徴
真空ガラスとは2枚のガラス間を0.2㎜程度にし、その空間を空気を抜いて真空状態にすることにより
- 熱の伝導(物体の中の熱の伝わり)
- 対流(熱の移動)
を阻止することができます。真空にすると2枚のガラスはくっついてしまうため、ピラーと呼ばれる小さな金属を等間隔に配置することにより真空状態が維持できます。
クリアFitという種類以外はLow-E金属膜が付き
- 放射(熱エネルギーの他の物体への移動)
も抑えることが可能。
真空ガラスのメリット
- ガラスの厚さが薄いのに断熱性能が良い
- ガラス面の結露を防止し、防音にも効果を発揮する
- アルミ窓の現在単板ガラスが付いている枠に真空ガラスを入れ替えて使うことが可能
- 1枚あたり30分程度で交換が可能
交換作業の時間が早いのは心理的な負担も減りますね
真空ガラスのデメリット
- 単板ガラスと比較すると重量が重くなり、開閉時力がいる場合も
- ガラスの中のピラーが近づくと気になる、真空にした後の密封の保護キャップが気になる人もいる
- 空気層が厚い普通のLow-Eペアガラスと比較すると価格が高い
- ガラス面は結露しないが、フレームは現在アルミ窓を使っていれば結露する
真空ガラスにすれば絶対に結露しないわけではありません。カタログにもきちんと書いてありました。
結露の発生する外気温度は、使用条件によって変化します。室内温度が高い場合など、使用条件によってはスペーシアでも結露を生じることがあります。また、スペーシアに交換することでガラス面の結露は軽減できますが、サッシ部分の結露は防げません。
引用:スペーシア カタログ
過剰な期待は禁物ですね
「クリアFit」と「スペーシア」の違い
真空ガラスには色々な種類があります。
まず、「薄型断熱ガラスクリアFit」は真空ガラスですが「スペーシア」の名前がついていません。Low-E金属膜が無く価格が安いですが断熱性能が劣ります。
Low-E金属膜が付いているのが「スペーシア」付いていないのが「クリアFit」です。
「クリアFit」は断熱性能が劣りますが防音性は変わらないので、Low-Eが必要ない箇所でなおかつ防音も欲しいスペースが狭い内窓の設置箇所に良いでしょう。
真空ガラスの種類と選び方
「真空ガラス スペーシア」の種類についてはこちらのKABE塾様の動画が大変わかりやすいです↓↓
静シリーズの「スペーシア静」「スペーシアクール静」は防音用の合わせガラスを1枚プラスしているためペアガラス用のフレームにしか入れられません。用途は
- 断熱性+静かさが必要な新築マンションやホテル、病院など
- 防音合わせガラスを使っているマンションの断熱リフォーム
と、個人宅で使用するのはレアケースといえます。
- 単板用のフレームであれば「スペーシア」「スペーシアクール」の中から(フレームの溝幅的に)
- ペアガラス用のフレームであれば上記+「スペーシア21」「スーパースペーシア」の中から
ご自宅に最適な種類を選べば良いでしょう。
真空ガラススペーシアの性能
スペーシアを検討するにあたり、性能値で比較されると選びやすいです。
基本となる「スペーシア」と比較して、
- 「スペーシアクール」はLow-Eガラスが遮熱タイプで日射熱を大幅にカット
- 「スーパースペーシア」はマイクロスペーサーの間隔を20㎜→28㎜に拡大、スペーサー(ステンレス製)の熱伝導を半分に(その分ガラスの厚みを4㎜×2枚で耐久性UP)
- 「スペーシア21」はペアガラスフレーム用として「スペーシア」にLow-Eガラスをもう1枚追加してその中にアルゴンガスを封入するという極上仕様。ビル用もあります。
ガラス種類 | 熱貫流率 | 日射取得率 |
スペーシア | 1.4 | 66% |
スペーシアクール | 1.0 | 49% |
スーパースペーシア | 0.65 | 48% |
スペーシア21断熱クリア | 0.91 | 58% |
スペーシア21遮熱クリア | 0.74 | 46% |
スペーシア21遮熱グリーンS | 0.83 | 33% |
スペーシア21がもっと性能が優れていそうな印象を受けますが、販売開始がスペーシア21が2002年、スーパースペーシアが2017年と15年間の進化の賜物になります。
※性能値は一番厚さが薄いガラスを記載しています
真空ガラススペーシアの価格
リフォームに適している一般的なスペーシアの参考価格を記載します。
こちらは材料代のみですので、これに別途取付費用等がかかります。
品種 | ㎡単価 | 1枚が0.3㎡以下 |
スペーシア6.2㎜品 | 49,500円 | 23,100円 |
スペーシアクール6.2㎜品 | 52,800円 | 24,200円 |
スーパースペーシア8.2㎜品 | 60,500円 | 27,500円 |
スペーシア21・18.2㎜品 | 70,400円 | 31,900円 |
アルミ窓の問題点と解決策
アルミ窓の問題点
これまでにLow-Eガラスや真空ガラスについて解説しましたが、問題はフレーム枠のほうです。
ガラスを性能の良いものに変えるだけで寒さが全く感じないようなニュアンスの宣伝記事がたくさん散見されます。単板のガラスから真空ガラスなどに変えれば確かに今までより良くなるのでしょうが、フレーム枠がアルミだと断熱効果は半減します。
引用:住宅・住戸の外皮性能の計算プログラムVer.02.01〜付録B 窓又はドアの熱貫流率の
B.1大部分がガラスで構成されている窓等の開口部の
表2 適用可能な窓の熱貫流率・線熱貫流率より
木製建具又は樹脂製建具 | 木と金属の複合材料建具又は樹脂と金属の複合材料製建具 | 金属製建具 | |
建具(フレーム)の熱貫流率(W/㎡・K) | 2.379 | 4.367 | 7.349 |
※実際の断熱フレームはチャンバー(空気層)や断熱材を入れてこの数値より良い製品はあります
アルミフレームの熱貫流率はなんと7.3(W/㎡・K)です。しかし業界的に御法度なのかわかりませんが、この数値が出てくることはまずありません。
単板ガラスの熱貫流率は6(W/㎡・K)なのに窓全体が6.51(W/㎡・K)になるのはそういうことです。
フレーム枠は面積が小さいから大丈夫とどこかで見ましたがそういう問題ではないですよね……
真空ガラススペーシアの通常タイプの熱貫流率は1.4(W/㎡・K)です。
これをアルミ窓の単板ガラスと交換すると窓全体で2.64(W/㎡・K)なります。
数値は一般社団法人 建築開口部協会より引用。
栃木の野沢ガラス店さんの温度計測による、
- 真空ガラススペーシア窓全体→2.64(W/㎡・K)
- アタッチメント付ペアガラス(中空層5㎜)+内窓プラマードU単板3㎜→2.70(W/㎡・K)※YKK AP二重窓の熱貫流率より引用
この両者の温度グラフがだいたい一緒なのがうなずけます。
しかしこの値だと冬はまだ寒いです。なぜなら私が困っていた結露する寒い樹脂窓+Low-Eなしのペアガラスは2.91(W/㎡・K)だからです。
内窓が付いている
- Low-Eなしペアガラス→1.74(W/㎡・K)
- Low-Eありガスなしペアガラス→1.40(W/㎡・K)
では適切な住まいかたをすれば札幌では結露や寒さを感じることはありません。道北や道東の最低気温が低いところは十分ではないかもしれませんが…。
以上の数値や実際の経験から防寒対策には最低でも窓全体の熱貫流率を2.0(W/㎡・K)以下にすることが適切だと感じます。
アルミ窓の解決策
説明した通り、アルミ窓は断熱性が悪いです。しかしこれまでと同じ使い勝手ではないとどうしてもダメな場合は真空ガラスに交換か外窓交換で対応することになります。
一番安上がりに断熱性能を上げる方法はやはり「内窓」です。
一番断熱性能が悪い単板ガラスアルミ窓6.51(W/㎡・K)が
- 内窓Low-Eペアガラスガスあり→1.61(W/㎡・K)
- 内窓Low-Eペアガラスガスなし→1.71(W/㎡・K)
と内窓を付けると驚異的な効果を発揮します。
内窓に真空ガラスを付けるとさらに断熱効果や遮音性が高まりますね
内窓にLow-Eなしのペアガラスを入れても2.26(W/㎡・K)と
アルミ樹脂複合窓のLow-Eペアガラスガスありの外窓交換2.33(W/㎡・K)に匹敵する値になっています。
まとめ:ガラス交換を数値による改善の提案をしました
この記事ではガラス交換について具体的な熱貫流率の数値を使い解説しました。
「以前より暖かくなった」「結露が減った」は感覚的なものにすぎず、住まいかたによっても変わるため絶対的な数値を出す必要性を感じたためです。
- ガラス交換はいくら性能の良いガラスを入れても、フレームがアルミだと効果が半減
- 真空ガラスは現在樹脂窓やアルミ樹脂複合窓を使っているかたにこそおすすめ
- アルミ窓の住宅には内窓設置をするか、外窓交換をして窓断熱をしほうが良い
真空ガラスは普及してきたとはいえまだ高額です。
Low-Eペアガスありガラスが1.3(W/㎡・K)と性能が良いのがあるので、樹脂やアルミ樹脂複合のペアガラスのお宅はガラス交換の際、真空とLow-Eで相見積もりするのも一手でしょう。
>>真空ガラスではないLow-Eガラスの交換はコチラの記事で詳しく説明しました↓↓
最後までご覧いただき、ありがとうございました。