内窓を付けると快適な生活を送れるのはわかったが、ガラスの選び方はどうしたら良いの?と疑問に感じた人は必見です。
ガラスにはLow-E(読み:ローイー)複層ガラスというのがあるのですが、その中の断熱タイプと遮熱(読み:シャネツ)タイプという仕様の違いがまぎらわしくプロでも間違ってるようなのです。
この記事では内窓・ガラス交換の際に様々な種類のLow-Eガラスを実際に自宅に使っている私が、ガラスごとの特徴やメリット・デメリットを解説しました。
この記事を読むとどの種類の窓ガラスを選べば良いかがわかります。
結論はガラスの種類は冬期間をメインに考えて選ぶのがベストです。温度差や光熱費の観点からも、冬期間を軸にガラス選びをしましょう。
夏よりも冬のほうが内外の温度差が大きいからです
複層ガラスの説明
二重ガラス(複層ガラス)が左の図、二重窓(内窓)が右の図です。似たような言葉なので間違わないように注意しましょう。
二重ガラスとペアガラスは同じ意味
1つのフレーム(枠)の中にガラスが2枚入っている物を二重ガラスあるいはペアガラスと呼びます。
ペアガラスはAGC株式会社の登録商標ですが、名前が一般に認知されているので二重ガラスはペアガラスの呼び名で浸透しています。
空気層は内窓の場合12㎜が一般的で、ガラスの厚さ3㎜✖️2枚+空気層12㎜=合計の厚さが18㎜になるのが通常の仕様になります。
また、1つのフレーム(窓枠)の中にガラスが3枚入っている物をトリプルガラスと呼びます。
ガラス間の空気をアルゴンガスに変更することも可能
ガラスの間には乾燥した空気が入っていますが、費用を追加するとアルゴンガスに変更することもできます。
下記は外窓が樹脂窓でガラスが複層(ペアガラス)の場合の二重窓の熱貫流率です。
内窓ガラス・中空層の仕様 | 二重窓の熱貫流率 W/(㎡・K) |
Low-E複層・アルゴンガス10㎜以上 | 1.33 |
Low-E複層・乾燥空気11㎜以上14㎜未満 | 1.40 |
複層・乾燥空気11㎜未満 | 1.74 |
アルゴンガス入りのデメリットは年1%程度ガスが抜けることですが、価格差がそれほど無ければ性能値は上がるので要検討ですよ
内窓・二重窓は同じ意味
今付いている窓の内側にもう1セット窓を追加することを内窓を入れるといいます。
二重窓にするも同じ意味になります。二重ガラス・ペアガラスに似ているのでまぎらわしいですね。
既存の窓ともう1セットの窓(内窓)の間にできた空気層で断熱効果を得られます。
「ペアガラスの内窓を入れる」というような使われかたをするので、この用語をぜひ覚えてください。
Low-E複層ガラスと複層ガラスの違い
ガラスに金属膜が付いているのがLow-E複層ガラス
Low-Eガラスとは(Low emissivity)低放射ガラスの略称で、低放射だと断熱性を向上できます。
Low-E複層ガラスとは複層(2枚以上)窓ガラスの一方の空気層側に銀や酸化スズの薄い金属膜が貼ってあるものを指します。※以後Low-Eガラスと表記
ひとつのフレーム(枠)の中に2枚以上のガラスが入っていて、一方に金属膜が貼ってあるということです。
逆にいうと、Low-E複層ガラスと複層ガラスの違いは金属膜があるかないかということだけです。
複層ガラス | Low-E複層ガラス | |
金属膜 | 無し | 有り |
熱貫流率 | 2.9 | 1.6~1.7 |
※中間空気層12㎜、ガラス3㎜の一般的な内窓を想定
薄い金属膜のコーティングで断熱性がアップします
Low-Eガラスの普及については北海道の新築では20年ほど前から一般的になってきました。
板ガラス協会参照の新築戸数普及率によると、近年ではLow-Eガラスが約9割を占めています。
平成18年 | 令和4年 | |
新築一戸建戸数普及率Low-E | 29.2% | 89.3% |
引用:板ガラス協会
エコガラスとLow-Eガラスの違い
実はLow-Eガラスはエコガラスになります。しかし、
- 「エコガラスS」が熱貫流率1.5以下
- 「エコガラス」が熱貫流率1.5以上4.0以下
- 上記熱貫流率のJIS区分が6つあり、従来の3つの区分と異なる
と、熱貫流率4.0以下は果たしてエコガラスと呼んで良いのか?という区分で、一般の人にはとても分かりづらいです。
以上のことから複層(ペア)ガラスの種類は、
- 複層ガラス(間に空気)
- Low-E複層ガラス(間に空気)
- Low-E複層ガラス(間にアルゴンガス)
の3種で区別すると理解しやすいです。
高額になりますが「真空ガラス」というのもあります
Low-Eガラスのメリットデメリット
Low-Eガラスのメリット
複層ガラスと比べたLow-Eガラスのメリットは、
- 紫外線を大幅にカット
- 日射熱をカット
- 断熱性の向上
があげられますが、Low-Eガラスの種類の選択を間違えると冬に太陽の日差しが入りにくくなり暖まらない家になってしまうので注意が必要です。
窓の断熱性向上によって、冬期であっても窓からの熱損失より日射取得による暖房効果のほうが大きくなり、それを重視すべき考え方になってきています。最新のエコハウスの窓が大きくなってきているのは、この考え方に基づいたものだといってよいです。
引用:最高の断熱・エコハウスをつくる方法 令和の大改訂版 西方里見
Low-Eガラスのデメリット
Low-Eガラスの最大のデメリットは一般複層ガラスに比べると日射の取得が少なくなることです。ただし熱の伝わりやすさが低いので、室内の熱が外に逃げにくいです。
Low-Eガラスの説明と選び方のわかりやすい動画はこちらです↓
また、Low-Eガラスは熱割れを起こす場合があります。熱割れについては別の記事で解説しましたので、そちらをご覧ください↓↓
Low-Eガラスにすると価格は上がる
Low-Eの有無で大きさにもよりますが金額的には大体Low-E有りが無しより2割程度価格は上がります。
以前よりLow-Eガラスの普及率が上がっているので、この程度の差ですんでいるのかもしれません。
参考までに>>我が家の寝室窓は南西で(外側二重ガラス+内窓二重ガラス)Low-E無しですがこちらは結露していません。
※↑追記・のちに内窓のガラスをLow-Eタイプに交換しました
しかし紫外線があまりカットされないので、畳が一部日焼けしています。大事な家具やコレクション等あるかたはLow-E有りがおすすめです。
>>結露の仕組みについてわかりやすく解説した記事はこちらです。
後悔しないためのLow-Eガラスの選び方
Low-Eガラスには断熱タイプと遮熱タイプの種類がある
- Low-E金属膜が室内側のガラスに付いているのが断熱タイプ
- Low-E金属膜が室外側のガラスに付いているのが遮熱タイプ
になり、金属膜の位置の違いにより性能値が変わってきます。
ここで注意しなければならないのは、同じ色のLow-Eガラスであれば断熱であれ遮熱であれ熱貫流率(熱の伝わりやすさ)は変わらないという点。
つまり断熱性能は変わらないのです。ここが勘違いが生まれる原因です。
メーカーによって呼びかたが違うのも勘違いを助長しています。
- YKK APでは断熱タイプ、遮熱タイプの呼び名
- LIXILでは室外ガラスにLow-Eのみ高遮熱仕様という呼び名
消費者のために業界で統一してください…
では何が違うのかというとお日様の入ってきやすさ、これを日射熱取得率といいます。
太陽の光が入ってきやすい南向きの窓に遮熱タイプのLow-Eガラスを入れてしまうと夏は良いが冬は暖まりにくい家になってしまいます。
南向きの窓にはLow-Eガラスの中で一番日射熱を取り入れられて熱貫流率も遜色ないLow-Eクリア(これは断熱タイプしかありません)がおすすめになります。
外から中が見えにくいしカッコいいからと安易に色付きのLow-Eを全部の窓に入れないように注意しましょう。
ガラスの違いによる熱貫流率等の性能差
ガラス種類(色) | 紫外線カット率 | 日射熱取得率 | 遮蔽係数 | 熱貫流率 |
単板ガラス | 25.7% | 0.89 | 1.00 | 6.0 |
複層ガラス | 40.2% | 0.80 | 0.91 | 2.9 |
Low-Eクリア | 68.5% | 0.58 | 0.66 | 1.7 |
Low-Eブロンズ | 68.5% | 0.43 | 0.49 | 1.7 |
Low-Eグリーン | 80% | 0.46 | 0.52 | 1.6 |
Low-Eグリーン(高遮熱仕様) |
80% | 0.39 | 0.44 | 1.6 |
YKK APのLow-Eガラスについての詳しい解説動画はこちらです↓
ガラスの色の違いによる見え方について解説
Low-Eガラスの色付きにすれば部屋の中が見えないわけではない
Low-Eガラスの色付きは日中は遠くからは部屋の中は見えにくいです。しかし、
- 近づくと中は見える
- 夜はレースのカーテン程度では電気をつけると丸見え
- 内窓にLow-Eだと外からは普通のガラスに見える
以上のことからガラスが反射して見えて格好が良いという理由で内窓にLow-Eガラスを選択するのはおすすめしません。
通路や台所など視線が気になる場所のガラスは「すりガラス」や「型板ガラス」など目隠し効果があるタイプに変更することをおすすめします。
目隠し効果のあるLow-Eガラスを選ぶこともできます!
目隠し効果のあるガラスの見え方
ガラスの奥には動物のぬいぐるみがそれぞれ置いてあり、ガラスの違いによって中の見え方も変わってきます。
「すりガラス」「フロストガラス」「型板ガラス」の違いについては、
株式会社コダマガラス様の動画が大変わかりやすいです↓↓↓
Low-Eガラスの色の違いや夜の外からの室内の見え方についてもっと詳しく知りたいかたはこちらの記事もご覧下さい↓↓
東西南北ガラスの種類と夏冬の考え
夏の遮熱はガラスよりも外付けシェードで考える(南向き窓)
一番日の入る南向き(我が家は南西)の窓は遮熱タイプの窓ではないほうが冬は良いとお伝えしました。断熱タイプの窓が正解になります。では暑い夏のことを考えるとどうでしょうか?
夏はガラスに日射が入る手前でシャットアウトする考えが最適です。外付けのシェードやよしずのような物を使って日射の対策をすることにより冷房費も抑えられますし、家の中を快適にすごせます。
東西北向き窓は遮熱タイプにする
冬に日射が入ってこない東西北向きの窓には遮熱タイプの窓にします。そうすることにより夏の日射や反射熱を防げますし、冬は室内の暖かい空気が外に逃げにくくなります。
北向き窓についてのわかりやすい動画はこちら↓
Low-Eガラスの見分け方
通常住宅のガラスの仕様はガラスの右下部分に刻印されています。
20年ほど前の製品のLow-Eガラスにも確認でき、見分けることが可能でした。
南中高度で季節による日差しの違いを理解する
中学理科で南中高度という上図の物を習いましたが、こちらで各季節ごとの太陽の動きと角度が理解できます。
上図の中心点に方角を合わせたご自宅を置くと、日の出から日の入りまでの日差しが具体的にイメージできます。
- 夏至(赤線)は朝晩北に近いところも日差しがあたり、角度が高い
- 春分・秋分(紫線)は日の出日の入りの場所、角度ともに夏至と冬至の間
- 冬至(青線)は朝晩南に近いところで日の出日の入りがあり、角度が低い
これを理解すると、今までの方角に合わせたガラス選びの説明が腹落ちできます。
窓について教科書のように学びたいかたや、新築で検討されているかたにはこちらの本で総合的に学ぶことが可能です↓↓
まとめ:Low-Eガラスの特性を理解して有効活用しよう
この記事ではLow-Eガラスについて種類や数値からその特性について解説しました。
Low-E金属膜のガラスが内側だと断熱タイプ、外側だと遮熱タイプだと理解していただければ良いです。
内窓にもLow-Eガラスを上手に選んでみてください。
冬期間は内外の温度差が大きく光熱費にも影響が出るため、窓は冬を中心に考えて選択する必要があることをお伝えしました。
以上参考になれば幸いです。
現在、Low-Eガラスなど高断熱窓を断熱改修リフォームに使うと高額の補助金がもらえます!「先進的窓リノベ事業」といいます。
これは人気の制度で早い者勝ちとなりますので検討はお急ぎください。記事を書いていますので興味があればぜひご覧下さい↓↓
最後までご覧いただき、ありがとうございました